2007
【ギュス様の書簡8日目】
(非常に達筆な草書体で記されている…)
この島に来る直前の事だ。
俺様は出発の準備と情報収集を兼ねて、旧知の仲である仰木雄介の元を訪ねていた。
理由は言うまでもない。奴が以前この島の探索に招待されており、一ヶ月ほどの滞在をしていたからだ。
遺跡がどのような場所であれ俺様の行く手を阻むような事は最初からあり得ない話だが、
全く下調べも無く乗り込むことが勇敢と思うほど、頭が足りていないわけでもない。
事前に得られる情報があるのならば聞いておくことに越した事は無く、
それも生の体験が知人の口から聞けるとなれば尋ねない理由など無かった。
その頃既に俺様の所に半ば居候として住み着きだしていたぬまも、
仰木雄介という名前を聞くなり着いていくと言って聞かず
連れて行かねばこの場で脱ぐとまで言い出した為、やむなく同行させることにした。
自らを底なし沼の主と称する小娘が、何故都会に住むいち化粧師の事を知っているのか。
それについて明確な回答が思い当たらず問いただしてみると、
驚いた事に、懐から取り出した封書の中から島への招待チケットと仰木への紹介状が見つかった。
極めて主観的で支離滅裂な話ぶりの為、説明の八割は意味の分からないものだったが、
(もふもふしていているが、とても頭の良いやつじゃ!等おおよそが意味不明の形容であった)
なんとか小娘の言葉を善意で拾ってやるとすると、ぬま助けた者が仰木に関わりのある人物ということらしい。
そやつがぬまに封書を渡したのだという。
「もしこの島へ渡ろうと思うのなら、まずは東京に住む彼を訪ねるといい」
紹介文にはぬまが島に渡りたがっていることと、必要なものを工面欲しい等の協力願い、
最後に筆記体の横文字でエミリーだかなんだかといったサインがされていた。
新たに得られたこの情報をまとめると一つの推論が浮かび上がってくる。
東京へ向かう列車の座席で、俺様は小娘にこう問いただした。
『ふ。ぬまよ、貴様は東京に行ったことがあるのか?』
おそらく初めての乗車であったのだろう。
流れ行く町並みや山々のまるで子供と同じように目で追い続けていた小娘は、
笑顔のつもりか大きな瞳を横にぐっと伸ばして振り返った。
「東京?知っておるぞ。あれじゃろ、カブキチョーとかいう歓楽の街があるところじゃろ?」
『そんなことは聞いておらん!行ったか行ってないかを聞いておるのだ!』
小娘の知識は分かっているようで全く分かっていないことの方が多かったが、
何故か卑猥な分野に関しては酷いほどに知識が蓄えられていた。
その理由は後々分かる事だが、とりあえずは置いておく事にする。
「行った事は……ない。ぬまは生まれてからずっと何処にも出たことが無いのでのう……」
少し寂しそうに呟く姿はその言葉が真実である事を示している。
この時、俺様の中で浮遊していた様々な推論が一つの線で繋がり結論へと導かれた。
『ふ。貴様…まさか、あの村で騒動を起こしておったたのは…東京へ行きたかったからか?』
途端に明るくなる表情。
それは結論が間違っていないことを証明すると共に、ある一つの最悪のケースも思い起こさせるものであった。
「ぎゅすは本当に賢いのう!その通りじゃ!今までの男どもはどうにも甲斐性なしばかりで困っておったのじゃ!」
島への招待状を持ち、探索経験者である仰木を訪ねたいと思っている小娘。
ここまで来て最終的な目的が違うなどということはあるまい。
東京にも一人で行けぬ世間知らずである。このままではまた一つ厄介ごとを背負わされる事は間違いない。
こんな小娘を連れておっては俺様の目的を果たす障害にしかならない。
釘を刺しておく意味でも、小娘が勘違いする前に一言を線を引いておくべきと感じた。
『ふ。小娘、先に言っておくが…貴様を連れて行くのは仰木の所までだ。その後の面倒など一切見ないからなッ!』
正直に申し上げて、この時は認識が甘かったと言わざるを得ない。
この小娘が口で言って聞くような物分りの良いものであるなどと、思うほうが間違いである。
それを思い知らされるのはそう遠い話ではなかった。
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身長:170cmは確実に。
体重:永遠のヒミツです★
体型:胸元には自信アリ!
趣味:萌えたりキューンってなったり。
特技:一気に駄文を打てること?
好きな食品:
オハヨーマンゴーヨーグルト。
苦手な食品:
酢昆布。
好きなもの:
キューンとするもの。
嫌いなもの:
キューンとしないもの。
性格:見たままです!
口癖:無いと思いますけどー。
仕事:某有名コスメサロン勤務。
副業:茶坊主の行動監視。
坊主:千利仇 末永
あんまり相手にしない方がいいですよ。
すぐに怒り出す茶道の達人らしいです。
どうしてこの人が私の先生と知り合いなのか謎…